著者は絵本作家の「あべ弘士」さん
「エゾオオカミ物語」という絵本があります。
著者は絵本作家のあべ弘士さん。
北海道旭川にある行動展示で有名な旭山動物園の飼育係として勤務されていた方。
今でこそ旭山動物園は大人気になり、その物語は映画やドラマにもなっていますが、なかなかお客さんが集まらなかった頃に係員さんたちが行動展示の夢を語り合った時、そのイメージをあべ弘士さんが絵に描かれたそうです。
旭山動物園を25年間勤められた後、絵本作家として独立して作品を創られていて、数々の賞も受賞されているんです。
あべ弘士さんの絵本の力強さの中にも優しさを感じられる動物の絵は、長く飼育員をされて多くの動物に接してこられた動物への愛を感じます。
動物への想いが絵や物語に現れている素敵な絵本作家です。
「ニホンオオカミ」と「エゾオオカミ」
日本でオオカミというとニホンオオカミが有名ですが、ニホンオオカミは本州、四国、九州に生息していたオオカミです。
エゾオオカミは北海道に生息していたオオカミなんですね。
その形態の特徴も異なっているんです。
ニホンオオカミは、オオカミの中でも体が小さいのが特徴です。
国立科学博物館に剥製が所蔵されているので見ることができるようです。
エゾオオカミは、ニホンオオカミよりもやや大きく、毛は褐色で尻尾の端は黒色とその形態も違っていたようです。
北海道大学植物園内にある博物館に剥製が所蔵されているようです。
エゾオオカミは、北海道の先住民であるアイヌの人々からカムイ(神)と呼ばれて崇められて共存してきたとされています。
現在、日本に生息していたオオカミはニホンオオカミ 、エゾオオカミ、共に絶滅したと言われています。
そんな、人との共存や動物の生態系があったにも関わらず、絶滅してしまった経緯にとても胸が痛みます。
「エゾオオカミ物語」
絵本全体を通して視覚の印象に残るのは色です。
「エゾオオカミ物語」で描かれている北海道の雪の世界を白と青で表現しています。
とりわけ深みのある青で描かれた冬の北海道には何とも言えないリアルを感じます。
北海道で生まれ育ち暮らしているからこそ描ける世界だと思います。
絵本「エゾオオカミ物語」は、エゾオオカミと人間の歴史がフクロウおじさんによって語られていきます。
上手く保たれていたはずの生態系がどうして崩れてしまったのか?
どうしてエゾオオカミは絶滅しなければならなかったのか?
あべ弘士さんの描く絵は力強く、温かい。
その温かさが失ったものへの思いをより強くする。
私、エゾオオカミは「エゾオオカミ物語」を読み終わった後は、いつも自然と遠吠えをしたくなる。
ワァォーーン。